2012年1月21日土曜日

二匹のカワウソと山犬

まだネパール国が出来ていないインド北部時代の遠い昔。
町から遠く離れた湖の岸辺に、ガンビーラとアヌティラという名前の二匹のカワウソが住んでいました。
このカワウソ達は、昼の間は岸辺の穴の中で眠り、夜になると湖を泳ぎながら魚や貝を捕って食べていました。
ある日のこと、二匹が穴から出て見るとすっかり夜になっていて、空には大きな月が出ています。
ガンビーラがアヌティラに言いました。「ご覧よ、月の光で湖がキラキラ輝いているよ。美しいねぇ!」
「本当に美しいね、こんな夜は大きな獲物が見つかるぞ、さあ、行こう!」
二匹のカワウソが湖に入って間もなくのことです。突然、アヌティラが大声を上げました。
「ガンビーラ手伝っておくれ!大きな魚を捕まえたんだ!ああ、早く早く、大き過ぎて引き込まれてしまう。早く、ガンビーラ!」
バシャバシャと音のする方に向かって、ガンビーラが叫びます。
「アヌティラ、直ぐに行って手伝うから頑張るんだ。魚を放すんじゃないぞ!」
明るい月の光りに照らされた湖の岸辺に、赤い色をした大きな魚が一匹横たわっています。その側(そば)で、何故かガンビーラもアヌティラも睨み合ったまま口を利きません。
叢(くさむら)に隠れて、2匹のカワウソの様子をジット見つめているのは山犬です。山犬が呟(つぶや)きました。
「・・・カワウソの奴らめ、魚の分け方で喧嘩を始めたぞ。ウヒヒヒヒ・・・こんな時こそ俺様の出番だ。今夜は赤い魚のご馳走だ。ウヒヒヒヒ・・・」
睨み合いを続けているカワウソに、山犬が声をかけました。
「カワウソさん達、今晩は。御月見で御座いますか?おやおや、これはまた見事な魚じゃ有りませんか。うーん、赤い魚ですな。これは飛び切り美味いんですよ。ところでどうなさいました。どちら様も恐ろしい顔をなさって・・・」
アヌティラが怒った声で言いました。
「ああ山犬さんか。この魚は私達が力を合わせて捕った魚なんだが、どちらにも損の無いように分けるにはどうしたらいいか分からなくてねえ。尤も先に見つけたのは私だがね」
ガンビーラも負けずに言いました。
「そりゃあ先に魚を見つけたのはアヌティラだけど、アヌティラが引き込まれそうになったのを助けたのは私だからねえ!」
山犬がこんな事を言いました。
「どうでしょう、私は今までも沢山の喧嘩を上手に纏めて参りました。ここは私に任せて下さいませんか?」
暫らく睨み合っていたガンビーラとアヌティラが答えました。
「どちらにも損の無いように分けることができるなら、任せるよ!」
山犬は大きな魚に近付くと、あっという間に三つに分けてしまいました。
「御覧なさい。頭の方、真中、そして尻尾の方・・・ちゃんと三つに分かれました。それじゃ、頭の方はガンビーラさん、尻尾の方はアヌティラさん、そして真中は俺様がいただきだ!」
魚の真中を咥えた山犬の姿は、あっという間に野原の中に消えました。
月が西の空に沈みかけています。カワウソの側に、大きな魚の頭の方と尻尾の方が並べて置いてありました。
アヌティラが呟きました。「・・・つまらない争いをしたために、本当に損をしてしまったねえ」
ガンビーラが答えました。「うん。つまらない争いをしたねえ・・・。いつものように仲良く分け合って食べればよかった。失敗失敗。二度とこんなことは止めようね!さあ、眠ろう」
間もなく東の空に太陽が昇ってきます。
(雑誌、ぶっきょうスクールより参照)
昔々のインド北部、時を越えて、今のネパールにこんな話が伝わっています。           彦

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